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▲▲▲ジェッターマルスって▲▲▲~Part5~

1 :スレ立て人:03/07/01 22:12 ID:Ihl1Suo7

平成アトムの放送の影響で、思い出された方が多いのか
お陰さまで千客万来♪ヘ(^^ヘ)(ノ^^)ノ
さらに新コーナー”川下博士の日記”も大好評のうちに
いよいよ~Part5~ へ突入です♪m(_ _)m

東映さん、そろそろDVD化していただけませんか♪f(^^;)

故手塚治虫大先生の作品らしいけど何方か御存じありません?
前スレ
ttp://comic2.2ch.net/test/read.cgi/ranime/1047516918/


757 :川下日記:04/05/22 18:43 ID:???
2012年5月16日
 今日は一日、昨日のSLXロボットを連れた男の事が頭から離れなかった。「美理」の
 体のサイズはあの娘と同じか、いや、もう少し大きいぐらいで丁度いいかも知れない。
 そんな事をぼんやり考えていた時、自分とあのロボットの娘を可愛がるしかない孤独な
 男の姿が一瞬重なり、はっとした…いや違う!SLXタイプのような人間に近い「心」を持
 たロボットは、もはや機械やモノではないのだ、すでに、それは人間と等しい存在なのだ。
 私はそう自分に言い聞かせた。だがその一方で、「それ」がどんなに人間のように振るま
 い、しゃべった所で、所詮「それ」は人形に過ぎないのではないかという否定的な思いも
 拭い去ることは出来なかったのである。

 ロボットを自分の娘のように愛しているあの男
 は果たして幸せなのだろうか…。


758 :川下日記:04/05/22 18:55 ID:???
2012年6月3日
 幾度かの試行錯誤を経たのち、最終的に「美理」の身体サイズを、14才ぐらいの女性の
 平均的な体躯に設定することで落ち着く。コンピューターでシミュレートした結果、この
 サイズだと一番理想的な重量分散を図れる事が判明した為だ。体のサイズが確定した所
 で、ラフな設計作業に入る。ここまでは順調だったのだが、設計作業を進める内に、ロボ
 ット製作へのモチベーションがやや低下してしまった。製作に掛かる総費用が徐々に分か
 り始めたからだ。製作コストに関しては、最初から厳しい予想はしていたが、それが、いよ
 いよもって現実味を帯びてくると流石に応える。プロトタイプはとりあえず、手元にある有
 り合わせのパーツと素材で製作すれば良いが、本番の製作では、まず体の各フレームと
 人工皮膚代だけでも結構な金額になる。まあしかし、これらの分の代金ぐらいは、昨年開
 発した「物質復元システム」の特許のパテント料でなんとかまかなえるだろう。各関節部で
 使用する超静音マイクロモーターの値段が高騰しているのも頭痛の種だが、一番の問題はやはり、
 電子頭脳だ。学習型の高度なA.Iの開発コストなど、一科学者の個人的な資金力では到底まかな
 えるものではないのだ。資金さえあれば自分の理想とする電子頭脳を組上げる自信はあるのだが…
 やれやれ、なんとかして資金を捻出する方法を考えなければなるまい。


759 :川下日記:04/05/22 18:57 ID:???
2012年6月20日
 夜分遅くに、不乱軒君から電話があった。モニターの向こうに見える彼は酷く泥酔しており、
 大変な剣幕でまくし立て始めたが、酔っているために、話の前後関係が混乱していて、
 良く分からない。興奮している彼を落ち着かせて、どうにか話を整理させると、彼はどうやら
 科学省を辞職したらしい。彼は、山の上君の指揮する新しいロボット開発のプロジェクトから
 外された事への不満を一席ぶつと、今度は彼が提出したという、次世代ファイタンの開発プラ
 ンすらも山の上君に握り潰されたと言いながら、モニターに次世代ファイタンの設計図…ファイ
 タンの胴体に闘牛のような頭部が付いたロボットだった…を叩き付けて、怒りを露にした。彼の
 辞職の理由はどうやらここら辺にあるようだ。しかし、不乱軒君のような優秀な科学者を何故、
 山の上君は干すような真似をしたのだろうか?山の上君は不乱軒君の設計した次世代ファイ
 タンを一笑に伏し、そんなものは今度のロボットが完成すれば必要が無くなるとまで言い放っ
 たという。不乱軒君は、「山の上は、10年前に天馬博士が作ろうとしていた「化け物」と同じ物
 を、もう一度、自分の手で新たに作り出そうとしているのだ!」と言った。しかし、天馬博士は自
 らの手で、そのロボットに関する資料を処分してしまったのではなかったのか?そう私が問うと、
 不乱軒君は「山の上は、天馬博士のロボットの資料の一部を手に入れていたのだ、それはごく
 初期の段階のラフ案のようなものだったのだが、山の上はそれからインスピレーションを得たよ
 うだ。」と言い、再び興奮してきたのか「復讐してやる!」、「モウスター!」とか訳の分からない
 ことを喚き始めたかと思うと、一方的に電話を切ってしまった。山の上君の科学省での横暴な振
 るまいの犠牲者となった不乱軒君には同情の念を禁じ得ない…。それにしても、山の上君が作
 ろうとしている「化け物」とは一体何であろうか…?


760 :川下日記:04/05/22 18:59 ID:???
2012年6月21日
 蒸し暑く不快な一日。昨日の不乱軒君からの電話の事が頭を離れない。お陰で今日一日は、
 仕事に集中出来なかった。天馬博士が作ろうとしていたロボットを山の上君が新たに作ろうと
 している…天馬博士に心酔していたあの山の上君ならやりそうな事だ…しかし、問題はそれ
 がどのようなロボットなのかという事だ。不乱軒君はそのロボットの事を「化け物」とも言ってお
 ったが…。私はそれが気になってしょうがなくなり、不乱軒君の自宅へ電話を入れてみた。しか
 し、電話は繋がらなかった。妙な胸騒ぎがしてならない…。


761 :川下日記:04/05/22 19:00 ID:???
2002年7月7日
 「美理」の試験体(プロトタイプ)の製作に着手。夜には、旧友の月丘博士
 が細君を伴って我が家に来てくれた。彼は一年ほど前に結婚したばかりで、
 彼の細君、真由美さんは彼よりもずっと年下であるが、落ち着いた感じの清楚な
 女性で、まったくもって彼には勿体ないぐらいの美人で本当に羨ましい限りである。
 共に夕食を食べながら歓談。月丘君は最近はロボット、特にアンドロイドの研究分野
 では目覚しい成果をあげている。私達の会話は、古典的なミンスキーの人工知能の理論
 から、最新のA.I理論まで際限なく続いたがやがて話題も尽き、最後には「最近私が耳に
 した噂では…」と月丘君が科学省の噂話を始めた。
 月丘君の話では、科学省は、不乱軒君を追い出した山の上君に歯向かう者も無く、今や
 山の上君の独裁体制となっていると。
 そしてロボット技術を応用した兵器の開発に明け暮れているらしいとも語った。
 私は、月丘君に、以前から気になっていた山の上君が指揮を取っている新しいロボット
 開発プロジェクトの事について訪ねてみると、月丘君は意外そうな顔をしてから、
 少々声を潜めて「いやあ、ご存知でしたか…」と切り出した。月丘君の話では、山の上
 君は、小型だが莫大な出力を生み出すロボットの動力の開発には成功しているが、それを
 制御する電子頭脳の開発には技術的な問題が多く手を焼いているらしい。また山の上君は
 その新しいロボットも軍事的な目的で使用することをほのめかしている、と。それを
 聞いて私は無性に腹立たしくなり「21世紀の技術の結晶であるロボットを兵器として
 使用するとは何事か!」と思わず怒鳴ってしまったが、月丘君も「まったくその通り
 です」と相槌を打ってくれた。彼の細君には呆れられてしまったようだが…。月丘君に
 私が今作っているロボットの事と、その製作資金の捻出に苦しんでいる事を打ち明けた所、
 彼は心当たりがあるから、今度当たってみると約束してくれた。


762 :川下日記:04/05/22 19:02 ID:???
2002年7月31日
 プロトタイプはほぼ完成。プロトタイプは頭部の無い胴体部分のみで、首からは何本
 ものコードが出ており、それらは外部のコンピューターに接続されている。多少見かけは
 悪いが、データの採取には最適なインターフェースが出来たと自負している。これからは、
 このプロトタイプで各関節部の動作チェックをしながら、設計の最終的な微調整を行う。
 またプロトタイプに様々な動作をさせてそれを外部のコンピューターでデータを採取し、
 そのデータを元に「運動感覚マップ」を作成する。作成した「運動感覚マップ」のデータを
 「美理」電子頭脳が完成した時にロードしておけば、それが「美理」が運動をする際の
 デフォルトの値となる。このようにあらかじめ基本的なデータを採取しておけば「美理」
 は起動直後でも、すぐに歩く事も出来るという訳だ。とりあえずここまでは順調に進んで
 いる。問題は、すでに底を突きつつある資金だが…月丘君からの連絡が待ち遠しい。 


763 :川下日記:04/05/22 19:05 ID:???
2012年8月2日
 「物質復元システム」ユニットの小型化に成功したので、それを「美理」のプロトタイプの
 両手に組み込んでテストしてみたところ、満足の行く結果が得られた。この「物質復元
 システム」はこのロボットの一番の特徴的な能力となるであろう。このシステム自体は
 一昨年に私が開発したもので「リーマン空間の理論」の応用したシステムである。原理
 的には、高エネルギーを1箇所に集中させることで瞬間的に強い重力場を発生させ、それが
 「時空の歪み(リーマン空間)」を引き起こし、その部分の時間を局所的に逆行させる
 システムのことである。勿論、それに伴うエネルギーの消費量も激しく、ほんの数分間しか
 時間を逆行させることしかできないが、壊れた機械などの応急処置がすぐにできる等の利点
 がある。ただし壊れてから時間が経過し過ぎた物の復元は不可能。近頃は、力ばかり強くて、
 物を破壊する事しか能の無いようなロボットばかり増えているので、このような繊細な修復
 能力を持ったロボットを作る事は、ロボットの平和的な利用を願う私の理想の具現化でもあ
 るのだ。


764 :川下日記:04/05/22 19:07 ID:???
2012年8月10日
 待ち焦がれていた、月丘君からの連絡が入る。彼の話では、とある大手エアカーのメーカー
 が衝突実験用のテストドライバー型ダミーロボットを開発するので、技術提供をしてくれるロボ
 ット学者を探しているらしい。彼の口利きで、すぐにでも契約できるとの事。条件も良くこの仕
 事を引き受ければかなりの金を得られるだろう。願ってもない申し出なのだが、仮にもロボット
 をこよなく愛するこの私が、破壊される為に作られるダミーロボットを設計しなければならない
 とは…。正直なところあまり気乗りのする仕事ではない。月丘君には大変申し訳無いが、返事
 は一日待って欲しいと伝える。


765 :川下日記:04/05/22 19:11 ID:???
2012年8月11日
 昨日一日中考えていたが、結局ダミーロボットの設計を引き受けると月丘君に伝えた。
 破壊される為のロボットを設計するのは忍びないが、ダミーロボットが果たす交通事故
 防止という社会的な貢献を考えれば、そう悪い仕事でもないと考え直したからだ。この
 仕事の分で「美理」の各関節で使用するマイクロモーター代金分はまかなえるだろう。
 午後から、早速ダミーロボットについての資料をネット上の図書館で探し始める。ダミーロボット
 といえば、ナーゼンコップ博士が有名だ。お茶の水博士との血縁関係もあったように聞いて
 いる。ナーゼンコップ博士は2003年にマリンエクスプレスを開発し、その実験用に非常に
 高性能のダミーロボットも製作している。博士の残してくれた資料を見つけダウンロードする。
 これは多いに参考になりそうだ。マリンエクスプレス計画は実に壮大な構想であったが、
 試験運転中の謎の事故の為、この計画自体が取りやめになってしまったらしい。博士もその
 事故で死亡したと聞いているが、未だに何故、あれだけのハイテク列車が事故を起こしたの
 かその真相は解明されていない。あの海底超特急には根本的な技術的欠陥があったと主張する
 者もいれば、過激な自然保護団体が仕組んだテロだったという説まであって、諸説紛々のようだ。


766 :川下日記:04/05/22 19:13 ID:???
2012年9月8日
 ここ数週間の間、日中はダミーのテストドライバーロボットの設計、夜間はプロトタイプの
 「美理」のテストに明け暮れている。プロトタイプのテストで、悩まされ続けていた関節ロー
 ル内のモーターの誤動作の問題もどうにか解決できた。これでようやく、プロトタイプによる
 テストも最終段階に入った。そろそろ各フレーム部と人工皮膚の発注をしても良いだろう。
 人工皮膚は、現在最高級の品質とを誇る「ジェームズ・ダルトン社」しか考えられない。あそ
 こは、業界で一番の老舗だけあってサポートもしっかりしている。信頼できる会社だ。問題は
 各フレーム部を何処に発注するかだが、ロボットのパーツを扱う業者で、品質と価格の面で
 考えると、やはり「グレーカラー商事」だろうか…。しかし、あそこはモノは高品質で安くても、
 裏で悪徳ロボット業者に顧客リストを横流ししていたり、兵器なども扱っている等、あまり良い
 噂は聞かない。かといって、こちらも資金的な余裕もあまり無いし…仕方が無い、何社かに見
 積もりを出させた上で検討するとしよう…。


767 :川下日記:04/05/22 19:18 ID:???
2012年9月10日
 人工皮膚を「ジェームズ・ダルトン社」に発注。フレーム部の見積もりの結果、予想通り「グレ
 ーカラー商事」が一番コストパフォーマンスが高かった。それどころか、こちらが強化プラスチ
 ックでと指定した個所の強度の問題性を指摘し、別の超軽量合金の使用を提案してきた。噂と
 は裏腹な、誠実な対応に満足したので結局フレーム部の作成は「グレーカラー商事」に依頼す
 る事にした。これで、ダミーロボット設計の仕事が完成すれば、マイクロモーターと超伝導バッテ
 リーを購入する資金も確保できる。あとは、電子頭脳の開発費用だけだ。だが、未だにその費用
 をどう捻出するばいいのか、まったくアテがない…。


2012年9月15日
 科学省が東京湾に浮かぶ人工島へ移転したとのニュースを見る。そこには豊富な実験施設
 が備えられ、アンドロイド工場も完備されているらしい。想像するに、山の上君のプロジェクトは
 そこの最新の設備を使わないと出来ないのかも知れない。電子頭脳の開発資金で苦しんでい
 る私とは対照的に山の上君は…いや、やめておこう。ここ数日間、資金の事ばかり考えている
 自分に少々嫌気がさした。ダミーロボットの設計で2、3箇所修正。仕事自体は順調に進んでい
 る。今月中にもメーカーに設計図を納品出来るであろう。


768 :川下日記:04/05/22 19:22 ID:???
2012年9月16日
  「美理」に搭載する電子頭脳の設計に着手。資金の事は極力考えまい。
 今は少しでも作業を先に進めておきたい。電子頭脳には、並列処理型のニューラルネットワークA.I、
 所謂「チャーチランド型」を採用するつもりだ。従来の直列処理型A.I、「フォーダー型」では、ロボット
 に「心」を与える事は出来ないと私は考えているからだ。しかし、現状ではまだ感情シミュレーターの
 プログラムが入ったフォーダー型の方が主流である。チャーチランド型は人間の脳の神経回路網を
 模している為に、人間の子供を教育するのと同じようにA.Iに学習をさせていかなければないない。
 その手間暇はかなりの労力と時間を必要とする作業でもある。単純にプログラムとデータをインプット
 すれば済むフォーダー型が未だに主流を占めている要因の一つに、チャーチランド型の扱いが難しさが
 挙げられる。私に言わせれば、フォーダー型の感情シミュレーターなどという物はお世辞にも「心」とは
 呼べないシロモノだ。感情や心は決してプログラミングでは再現出来ないものなのだ。実際、多くの
 科学者達が「心」という難問の前に立ちすくんでしまっている。それは例え実現可能でも人間以外の
 モノなどには譲れない「聖域」だと主張するロボット学者もいるし、山の上君に至っては「ロボットに心
 などいらん!」などと言い出す始末だ。彼もチャーチランド型A.Iを嫌っている。あの短気で怒りっぽい
 性格では、根気のいるロボットの教育などやっていられないのであろう。だが、私は断言する、ロボット
 にも「心」は必要であると。そして「心」は技術的な努力の結果に生まれるものではなく、人の手で育
 んでこそ生まれるものだと言う事を。


769 :川下日記:04/05/22 19:27 ID:???
2012年9月30日
 テストドライバー型ダミーロボットの設計図が完成。どうにか期日通りにメーカーに図面
 を納品する事が出来た。これで久しぶりにまとまった収入を得られる。仕事を紹介してく
 れた月丘君にお礼の電話を入れる。月丘君から、彼の細君は体が弱く病院通いを続け
 ているという話を聞いた。つい冗談で「美人薄命というから気をつけたまえ」と言ってしま
 う。それを聞いて月丘君も笑っていたが、内心気を悪くしたのではないかと思い反省して
 いる。どうも私は昔から思ったことをすぐに口に出して言ってしまう悪い癖がある、改めな
 ければ。ロボットの眼球システムの権威、ドクター・フラナガンに「美理」の眼球システム
 について意見を求めるメールを送る。


770 :川下日記:04/05/22 19:29 ID:???
2012年10月1日
 ここ1ヶ月以上、家にこもりっきりの状態が続いていたので、気晴らしに公園へ散歩に出た。
 久しぶりに見る外の景色はすでに秋になっていた。公園のベンチに座りながら、本を読んで
 いると、父親と手をつないだ幼い女の子が私の目の前を通り過ぎていった。その二人の後ろ
 姿を見ながら、私は、ハッとして思わず立ち上がってしまった。私は、SLXタイプを連れたあの
 男の事を思い出したのだ。…あのSLXタイプ禁止条例以降、本当の意味での「心」を持ったロ
 ボットの研究は沈滞してしまっている。SLXタイプが排斥された理由は、表向きの理由としては
 莫大なエネルギーの消費量を抑えられない事であったが、その裏にはもう一つの隠された理由
 があったのだ。それは人々の「人間に近い感情を持ったロボット」に対する畏怖の感情であった。
 SLX以降の現在のロボットは、フォーダー型のAIにあらかじめプログラムされた感情シュミレータ
 ーを使っている。いくら感情シュミレーターが発達したところでそれは所詮プログラムされた、
 まがいものであり、到底「心」とは呼べない代物だ。だが、人々はそれを知っているからこそ、
 ロボットに対して寛容でいられるのかもしれない。もし、ロボットがプログラムではない意思や
 感情を備えたと知ったら、再び人々はロボットを排斥しようとするだろうか…あのSLXタイプの時
 のように…しかし、SLXタイプ開発当時と比べて、現在は人々のロボットに対する理解も進んでいる
 筈である。もう二度と同じような悲劇を繰り返してはいけないのだ。


771 :川下日記:04/05/22 19:32 ID:???
2012年10月11日
 ドクター・フラナガンより大変丁寧な返信を頂く。示唆に富んだ内容に思わずうならされる。
 どうやら、私は眼球システムの設計を今一度、見直す必要があるようだ。
 午前中に「グレーカラー商事」より、「美理」の各フレーム部が納品される。設計図通りの完璧な
 仕上りに満足。午後には、ダミーロボットの仕事をしたエアカーのメーカーから大きな届け物があ
 り驚く。何かと思えば新製品の「ジェットスクーター(※)」であった。私の設計したダミーロボ
 ットの出来に大変満足してくれたようで、これは特別な「ご褒美」という訳らしい。
 その気持ちは有り難いのだが、こんな若者向きのスクーターなど恥ずかしくて乗れたものではない。
 それこそ年よりの冷や水と笑われかねない。さて困ったと思いながら「美理」のフレームを見つめて
 いる妙案を思い付いた。この「ジェットスクーター」は私の「娘」に使わせる事にしよう。


772 :川下日記:04/05/22 19:33 ID:???
2012年10月20日
 先日、ダミーロボット設計の仕事の代金がエアカーのメーカーより振り込まれたので、
 超伝導バッテリーとマイクロモーターの発注をする。ボディ部分のパーツ自体はこれで
 すべて揃った。午後に不審な男の訪問者あり。男は「スカンク・草井」と名乗った。
 名前通りウサン臭い男だった。「押し売りならいらんよ」と、インターフォンで面会を断る
 と、男は「先生は今、新しいロボットを製作中のようですが、私はそのロボットに必要なもの
 をお持ちしましたのですよ。」等と話し始めた。私は、この男がロボットを製作している事
 を知っている事に驚いた。一体、何処から漏れたのか?…グレーカラー商事か?……
 やはり、裏で顧客リストを悪徳ロボット業者に流しているという噂は本当だったのだ!
 私は、その男に抗議してやろうと思い玄関のドアを開けた。そこには長身で青白い顔の
 男が気味の悪い笑みを浮かべて立っていた。「お目に掛かれて、光栄です、川下博士。
 電子頭脳の権威である、あなたならコレの価値がきっと分かりになる筈だ。」そう言いな
 がら男は手に持った小型の集積回路を私の目の前に差し出した。「これは、電子頭脳に
 取り付けるユニットのようじゃが…」と私が言うと、男は満足げに頷きなら「さすがは、川下
 博士だ。お察しの通りこれはロボットの電子頭脳に組み込むユニット…通称『オメガ因子』
 これさえ組み込めば、ロボットにも人間と同じ「心」を持たせる事が出来るってもんですぜ」
 と言って笑い始めた。「オメガ因子」!何処かで聞いたことがある…そう、あれはラム博士
 が研究していたという、人間生悪説に基づき、ロボットに悪の心を植え付けるユニットの
 事ではないか! 「き、きみはそんなモノを何処から手に入れたんだ!」興奮して私は思わ
 ず怒鳴ってしまった。


773 :川下日記:04/05/22 19:35 ID:???
 「まあまあ、そう興奮しないで下さいよ。先生は今、『心』を持ったロボットをお造りになろうとし
 ているのでしょう?私はただ、そのお手伝いがしたいだけなんですよ、へへへ。考えてもみな
 さい、ロボットを人間に近づけたいのなら、『悪の心』を植え付けてやるのが一番ではないです
 かね?それとも先生は、人間の言う事を聞くだけの機械人形がお望みですかい?ロボットに
 『人間と同じ心』を持たせたいのなら、『悪の心』を入れてやらなければ完全とは言えませんぜ、
 なぜなら、どんな人間の心の中にだって『悪の心』は必ずありますからな。どうです、今ならお
 安くしときますぜ」 男の説く奇妙な論理に私は虚を突かれたが、「何が正しいことで何が悪い
 ことかは、私が学習させておぼえさせるわい!ロボットに先天的に悪の概念を持たせる等、
 言語道断だ!」と反論した。 「やれやれ…そうですか、そいつぁ残念だ、先生ならこの『オメ
 ガ因子』の価値が分かって頂けると思ったが…まあ、いずれ私の言った事が正しかったと分かる
 日が来るでしょう。これだけは、はっきり言っておきますが、先生がどんなに優秀なロボットを造
 ったところで、それは所詮、完全に人間と同じ心を持っているとは言えないタダの機械人形に過
 ぎないんですぜ。」 男は、そう言い残して去って言った。

 私は、機械人形をこさえているのではない、「心」を持った人間と同じロボットをこさえているのだ…
 気が付くと私は、そう心の中で何度も繰り返していた…。


774 :川下日記:04/05/22 19:38 ID:???
2012年10月21日
 今日もまた男の訪問者あり。今度の男は頭がハゲており、その代わりに鼻の下に立派な白いヒゲを生
 やしていた。男は私が玄関を開けるとすぐに、江戸弁で慌しくしゃべりまくり始めた。「いや、あっしは私立
 探偵で、伴俊作ってぇもんですんがね、いやいや決して、怪しいもんじゃござんせん。本日、先生のところ
 へ伺ったのは、この男を追っているからでありまして…」と言いながら、1枚の写真を差し出した。写真には
 昨日の男、「スカンク・草井」が写っていた。私が、「この男なら昨日来たが…」と言うと、伴氏は歯軋りしな
 がら「くそー!一日遅かったか!このスカンク・草井って野郎は、実はとんでもない極悪犯でして、最近は
 ロボット学者の自宅を訪問しながら、法外な値段であるものを売りつけようとしているらしいのですが、先生は
 被害に遭わなかったですか?…そうですか、そりゃあ、良かった良かった。で、彼奴は、どちらへ行きまし
 たかな?」 とまくし立て、スカンクが去って行った方角を教えるやると、礼もそこそこに、その男は走り去っ
 ていった。すると彼の後を追うようにして三人の子供が、「先生、待って下さいよ〜!いつまで探偵ごっこを
 続けるつもりなんですかー!」と叫びながら追いかけて行くではないか。「コラー!シブガキ、タマオ、ケンイチ!
 先生の後をついて来るんじゃなーい!それに先生は『ごっこ』をしているわけではないのだ!」というあの男の
 怒鳴り声が聞こえた。どうやらあの探偵は学校の先生でもあるらしい。しかし、こう訪問者が多くては、研究にも
 集中出来ない、やれやれまったく困ったもんだ。


775 :川下日記:04/05/22 19:39 ID:???
2012年11月18日
 私の目の前には頭部のない作りかけのロボットが工作台の上に寝かされている。
 ここまで来て、ついに資金も完全に底を突いてしまった。
 莫大な費用のかかる電子頭脳の開発費を捻出する術はもう私には残っていのだ。
 最後の手段として、幾つかのAIメーカーへ、感情シミュレーターのような模造品
 ではない、人間同様の「心」を持つ事の出来るA.Iの開発を持ちかけたが、
 そんなものを造る事に何の意味がある?と一笑に伏されてしまった。

 私には、この人形に命の火を灯してあげることは永遠に不可能な事なのかも知れない。
 ロボットを作りながら時折、自分をピノキオを作ったゼペット爺さんのように思うこと
 があったが、現実にはこの人形に命を与えてくれる女神もいる筈もなく、やはり今の私
 は、ただの孤独な老人に過ぎないのだ。


776 :川下日記:04/05/22 19:57 ID:???
2013年12月10日
 山の上君から突然電話が掛かってきた。モニターにはいつもの不機嫌そうな
 彼の顔が写っていた。「これはこれは、科学省長官が私なんかに一体何の用かね?」
 と心ならずも卑屈な応対をしてしまい、一瞬、山の上くんの顔が更に不機嫌そうに
 歪んだが、彼はすぐに気を取り直してこう切りだした「君に電話したのは他でもない、
 折り入って話を聞いてもらいたいことがあるからなのだ…聞いてもらえるかな、川下君」
 彼の話とは、例の科学省で彼が開発を進めている新型のロボットの事であった。
 すでに体の主要部分の設計は済み、製作段階に入っているが、肝心の電子頭脳の開発は
 難航しているという。科学省で開発した電子頭脳では、ロボットのメインの動力機関、
 高出力の超小型核融合システムの制御がどうしてもうまく出来ずシミュレーションでは
 何度やっても暴走を繰り返してしまっているらしい。「さすがの山の上君もほとほと手を
 焼いておるようじゃな。で、この私の何をしろというのかね?まさかそのロボットの電子
 頭脳を私に作れとでもいうのかね?」私がそう言うと、山の上君は「これは科学省の極秘
 プロジェクト、誰にでも頼めることではない…君とは学生時代からの付き合いで気心も知れ
 ているし、それになんと言っても君は電子頭脳の世界的な権威ではないか、だからこうして
 頭を下げてお願いしているのだ。勿論、相応の報酬も用意するつもりだ」と言った。確かに
 悪い話ではない。むしろ資金に窮している今の私には、まさに渡りに船、願ってもないチャンス
 かも知れぬ。しかし、あの山の上君が科学省の極秘プロジェクトを私のような一介のロボット
 学者に話すとはよっぽど行き詰まっているらしい。
 「何しろ急な話だから、驚いているだろうが、どうか私を助けると思って引き受けてくれんかね?
 今から、ロボットの大まかな設計図をそちらに送るから、それを見ておいてくれたまえ。では後日
 また電話する。」 山の上君はそう言い残すとモニターから消えた。やれやれせっかちな男だ。



777 :川下日記:04/05/22 20:03 ID:???
2012年12月11日
 私は科学省から送られて来た新しいロボットの設計図を見て考え込んでしまった。
 設計図はさすがに科学省の機密でもあるので、細かい部分はぼかされていたが、
 私もロボット学者の端くれ、略してある設計図を見ても、これが一体どんなロボットなのかは
 おおよその見当はつく…なんという事だ、子供のような小さなボディーに不釣り合いな高出力
 核融合システム…10万馬力は軽く出る、まさに「怪物」だ、これは…再びモニター上の図面
 に目をやると、そこには『MARS』というこのプロジェクトのコードネームが書かれていた。
 MARS…マルス、確かマルスという名は、ローマ神話の「戦いの神」の名…ふと以前月丘君の
 言った言葉が脳裏をよぎった『科学省の今度の新しいロボットも軍事利用の目的があるようです。』
 山の上め、この私にロボット兵器の電子頭脳の開発を依頼してきたのか!
 しかし、一体どうすればいい…断るか? いや他のロボット学者に依頼してこれを完成させて
 しまうかも知れない…私はしばらく考えを巡らせていたが、ある妙案を思い付いた。ここは一つ
 奴と駆け引きをしてみるか、それしか手はない。



778 :川下日記:04/05/22 20:06 ID:???
2012年12月14日
 モニター上に写る山の上君の顔はすこぶる機嫌が良さそうに見えた。
 「どうかね、科学省の新型ロボットの感想は?気に入ってくれたかね?」
 私は少し間を置いてから率直な感想を述べた。
 「確かに素晴らしい事は認めるが…しかし、この小さなボディーにこのような大出力の
 核融合システムは、オーバースペック過ぎるのではないかね?」
 山の上は勝ち誇ったように笑い声を上げながら言った。
 「オーバースペック!それこそ私の望みだ。あれだけの小型のボディーに高出力
 の核融合システムを搭載出来る技術力は何処にもあるまい!日本の、いや世界の
 ロボット工学の中でも最高水準の技術がそこに使われておる。私がもっとも腐心したの
 もその部分だ。」
 私は皮肉を込めて言ってやった。
 「もっとも、その有り余る『力』を制御できないようでは何の役にも立たないがの。」
 案の定、山の上君は私の兆発に乗ってきた。
 「では、その『力』を制御出来る電子頭脳に関して君の技術的な見解を聞こうではないか。」
 「結論から言えば、従来の直列処理型A.I、フォーダー型では制御は不可能だという事は
 科学省のシミュレーションテストの結果の示す通りじゃ。あのシステムは繊細な判断の
 出来る並列処理型のニューラルネットワークA.Iが持つ『心』でなければ制御は出来まい。
 それだけ高精度のシステムであることは設計した君が一番良く分かっていると思うがの。」 
 「んぬぬぬ…あの面倒なニューラルネットワークA.Iだと…ましてロボットに『心』など…。」
 山の上君は歯軋りしながら、しばらく考えていたが、やがて決心したようで口を開いた。
 「仕方があるまい…確かに科学省のシミュレーションでは、フォーダーの改良型電子頭脳でしか
 テストしていなかったからその限界についてはワシも良く分かっておる。今回に限り君の意見を
 採用しよう。」どうやら山の上君は、渋々私の意見を受け入れたようだった。
 「チャーチランド型A.Iは、子供を育てるように教育には手間隙がかかるが、いいのかね?」


779 :川下日記:04/05/22 20:08 ID:???
 「無論、このロボットは私の息子として強く雄々しく育てるつもりだ。その為の苦労など惜しまん!」
 私は、山の上君のこの言葉を聞いて愕然とした、彼も私のように「子供」を欲していたのか…。
 あのロボットが子供と同じ大きさに設計されている意味がようやく理解できた。
 しかし、いくら外見は子供でも強大な力を有する「怪物」には違いない…このロボットをその
 まま作らす訳にはいかんのだ。私なら、電子頭脳に人間に近い「心」を与える事が出来る。
 『心』さえあれば物事の良し悪しの判断が出来る筈だ。もっともそれには人間らしい「心」を育む
 教育をする必要があるが。山の上君が他に何か意見はないか聞いてきたので、電子頭脳の
 製作を引き受ける上で、3つの条件を提示した。1つは試作品の電子頭脳を作る必要がある事、
 2つ目はその試作した電子頭脳の所有権は私にあるということ、そして最後に完成したロボット
 の「教育」に関して私にも口出しをする権利があるということ。山の上君は、最初の2つに関して
 は、試作品の電子頭脳の製作費の制限を加えることで認めてくれたが、最後の条件に関しては
 断固して譲らなかった。やれやれ、まったく頑固な男だ。


780 :川下日記:04/05/22 20:12 ID:???
2013年5月3日
 電子頭脳の開発資金は科学省が負担してくれる事になった喜びで、私は今までのうっぷんを
 晴らすかのようにここ数ヶ月の間は休むことなく憑かれたかのように電子頭脳の設計に没頭し
 続けた。限りなく人間に近い「心」を宿した電子頭脳を作るという、私の夢がようやく叶う時が
 来たのだ。しかも作った電子頭脳のプロトタイプ(試作品)は私の物になるのだ。
 しかし、そんな浮かれる私の心に釘を刺すような出来事が起こった。我が友、月丘博士の細君が
 長男のタケシちゃんを出産後、ずっと体調を崩して床に伏せっていたのだが、先日急死したとの
 連絡を受けたのだ…。若くて美しい細君を亡くした月丘君の落胆振りは激しく、私はかける言葉も
 なかった。彼の一粒種、タケシ君の事も心配だ。月丘君の妹が、まだ幼子のタケシちゃんを引取って
 養育すると言い張っていたが、月丘君はそれを拒否していたようだ。もっともあの兄妹は昔から
 仲が悪く、それにあの妹は兄である月丘君の発明のパテントを狙っているという悪い噂も流れている…。


781 :川下日記:04/05/22 20:14 ID:???
2013年6月20日
 試作品の電子頭脳の設計の最終的な修正作業段階に入ったが、ここに来て私は学生時代に読んだ、
 世界で初めて実用的な電子頭脳を開発したワークッチャア博士の論文『ロボットの感情メカニズム論』
 と天才科学者天馬博士が失踪前に残した『反応推敲プログラム、「心」とはそれだ。』という走り書きの
 メモの間に大きな関連性がある事に気が付いて思わず驚嘆した。それは正に先人の偉大さに触れた
 瞬間であった。その時私は、体中が震え、恍惚感とも畏怖とも言えぬ奇妙な感覚に捕らわれた。
 私は、人間が「機械に命を与える」という神の御業を真似る行為の倣岸さやおこがましさにようやく
 気が付いたのだ。しかし私は前に進まなければならない…。


2013年7月9日
 いまいましい!完成した電子頭脳の設計図を元にシミュレーターでテストを繰り返すが、電子頭脳の
 放熱の温度が高過ぎる為に、作動時間の経過とともに電子頭脳が誤動作をするようになり、そのまま
 放っておけば電子頭脳が自壊してしまう事が明らかになったのだ。科学省の新型ロボットには、高価
 な冷却素子である高純度の単分子カーボンナノチューブを巡らせることができるから問題にはならないが、
 プロトタイプの電子頭脳の製作予算はぎりぎりしかなく、そんな高価な冷却素子は使えないのだ。
 一体どうすればいい…。



782 :川下日記:04/05/22 20:18 ID:???
2013年8月15日
 電子頭脳の排熱問題にはさんざん頭を悩まされた。プロトタイプの方は予算的な限界がある以上、設計の
 変更は許されないのだ。そこで、今度は電子頭脳の「容れ物」となるロボットの頭部の設計を放熱効率
 を上げるために修正をすることにした。まず、人間の毛髪にそっくりな「人工毛髪」を使う事を断念し、
 熱伝導の優れた素材で頭部を覆い、それ自体が放熱の為の「ヒートシンク」として役目を果たすように設計
 し直した。更に放熱の効率を上げるために毛髪を模した部分の面積を広く取った為、まるで髪の毛が側頭部
 から角のように生えた格好になってしまった。おかげで放熱の問題はこれで解消できものの、ボディーとの
 バランスが悪くなり、少々頭でっかちになってしまった。人工毛髪を断念したために、見た目の人間らしさ
 が損なわれたのも心残りだ。だが、そういったマイナス面をひいても、この電子頭脳の働きによって得られる
 「人間らしさ」の方が、外見上の「人間らしさ」よりも勝る筈だと私は固く信じている。


783 :川下日記:04/05/22 20:33 ID:???
2013年9月4日
 久しぶりに月丘君の自宅を訪問。細君が亡くなって以来、彼の事が気に掛かってはいたのだが、
 月丘君は、少々やつれてはいたが思っていたよりも元気そうに見え安心した。タケシちゃんの世話は
 ベビーシッターを雇っているという。それを聞いて、「他人に預けるぐらいなら、実の妹のヒロコさんに
 でも任したらどうかね?」と、思わず私は彼に抗議してしまった。彼は、黙って首を振り、何も言わずに
 私を彼の研究室に通すと、そこであるものを見せた。驚きのあまり、声をあげられない私に代わって
 月丘君が話し始めた。
 「そうです、これが私の苦心の作、『ネオ・ハーモニードライブ』、いや、『マザー回路』と呼んだ方がいい
 かも知れん…。」 彼は妻の真由美さんが病床に臥せった時に、彼女の「脳波パターン」をすべてこの
 「マザー回路」にコピーしておいたのだという。「私は、真由美そっくりのアンドロイドを作り電子頭脳に、この
 『マザー回路』を組み込むつもりだ。真由美の我が子を思う母親の気持ちをそっくり受け継いだアンドロイド
 を作るのだ。そして、それが完成すれば、タケシにとって、どんな人間の女性も足元にも及ばない『完全な
 母親』になる筈なんだ…。」 狂っている…狂気そのものだ、あの天馬博士も自分の息子を交通事故で亡くし、
 自分の息子をロボットとして蘇らそうとして、狂気に陥ったのだ。まるで今の月丘は、天馬博士が憑依している
 かのようだ…。しかし、一体誰が月丘や天馬博士の事を責められよう、天馬博士の幻影を追う山の上や、ロボ
 ットに人間と同じ『心』を与えようとしている私とて、同じように科学に憑かれた愚かな男に過ぎないのだから…。


784 :川下日記:04/05/22 20:40 ID:???
2013年10月25日
 プロトタイプの電子頭脳の組み立てはほぼ完成し、後は、シミュレーターによるテストを行うだけと
 なった。プロトタイプの電子頭脳はテストの終了後、わが娘「美理」に取り付けることになるのだが、
 科学省の新型ロボット『MARS』用には、この後、プロトタイプを元に更に改良を加えなければならない。
 おそらく『MARS』の電子頭脳は、より小型で高性能な電子頭脳として完成し、私の生涯の傑作と
 呼べるものになるだろう。しかし「美理」と「MARS」の電子頭脳は基本的なアーキテクチャはまったく
 同じものなので、この二体のロボットはお互いをよく理解し合える関係になる筈だ、人間で言えば
 異母姉弟…いや異父姉弟になるだから。そして私は、「美理」が姉として「MARS」に強さだけではなく、
 正しさや優しさを教える事を出来るロボットになることを強く望んでいる。



2013年11月10日
 「美理」の頭部に電子頭脳をセットする作業が完了した。エネルギーの注入が終われば、明日にも起動
 することが出来るだろう。資金難に苦しみながらもようやくここまでこぎ付けたのだ。私は、工作台の上に
 寝かされている「美理」の前でささやかな祝杯をあげた。愛しい我が娘、まるで本当に寝ているように
 やすらかな顔をしている。今はまだ冷たい人形にしか過ぎないが、明日お前が目を覚ました時には、私は
 一人ではなくなるのだ…。


785 :川下日記:04/05/22 20:41 ID:???

 「パパ、コーヒーをお持ちしましたけど」
 美理は川下の書斎をノックしたが返事がないので、ドアを開けて書斎に入った。
 川下は、机の上にうつ伏せになって寝ていた。
 机の上には昔の日記を綴ったノートが開かれている。
 「あらあら、パパったら日記を読みながら寝ちゃったのね…」
 美理は日記の綴られたノートを閉じて本棚に戻し、川下の肩に毛布をそっとかけた。
 「おやすみなさい、パパ…」
 川下の耳元でそうささやくと、美理は書斎を出てドアを静かに閉めた。

 
 おしまい。


786 :名無しか・・・何もかも皆懐かしい:04/05/22 23:22 ID:???
>>751−785
おぉ!川下日記完結記念age。
作者の方、お疲れ様でした。またいつか続編をお願いします。

787 :名無しか・・・何もかも皆懐かしい:04/05/23 10:07 ID:???
マルスの世界の裏に見え隠れするアトムの世界が隠し味になっていてイイ!!
アニメ版もこれと同じ設定にして欲しかった。

788 :名無しか・・・何もかも皆懐かしい:04/05/23 12:18 ID:???
>>751
一挙掲載、完結おめでとう。

この続きも楽しみだなあ。

789 :名無しか・・・何もかも皆懐かしい:04/05/23 14:28 ID:???
すごい読み応えがありますた。乙〜。

790 :名無しか・・・何もかも皆懐かしい:04/05/23 15:54 ID:???
http://up.isp.2ch.net/up/05ab66791c8f.JPG
今風に言えば、初の萌えフィギュアってとこかな

791 :名無しか・・・何もかも皆懐かしい:04/05/24 02:21 ID:???
>>751-785
川下日記、お疲れ様でした。
素晴らしいですね。
続きも楽しみです。


792 :名無しか・・・何もかも皆懐かしい:04/05/24 02:29 ID:WgmcNKLN
俺のジェッターマルスで印象に残っているシーンといえば
野球をやっていてマルスが投げたボールをマルスが打ってその打ったボールをマルスが飛んでいってキャッチすると言うシーンだす。
みんな憶えてる?

793 :名無しか・・・何もかも皆懐かしい:04/05/24 03:31 ID:???
>>792
覚えている!


794 :日記書いたヤシ:04/05/29 11:37 ID:???
遅レスですが、あのようなヘタレ作文を読んでくれて感想カキコしてくれた皆さんには
感謝しております。本当にありがとうございました。

あと、続編ですか…うーん…今は同人誌の原稿書きで手一杯なんで…^^;
(正直、「続編を」という反応を頂けるとは、まったく予想もしていなかった。)

でも、また何かいいネタを思い付いたらやりたいと思っておりますので、その時は
またよろしくお願いします。


795 :名無しか・・・何もかも皆懐かしい:04/05/30 16:09 ID:DaHD3wQF
今度は「火の鳥 マルス編」をプリーヌ!

796 :名無しか・・・何もかも皆懐かしい:04/06/07 06:46 ID:DlmBIFBG
ヤフーの番組表のテレビ埼玉の宇宙エースの最終回の翌日の枠が、「ジェッタ」と書かれているがもしやテレビ埼玉で放送なのか。


797 :名無しか・・・何もかも皆懐かしい:04/06/07 09:06 ID:???

                \ │ /
                 / ̄\   / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
               ─( ゚ ∀ ゚ )< さいたまさいたま!
                 \_/   \_________
                / │ \
                    ∩ ∧ ∧  / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄\∩ ∧ ∧ \( ゚∀゚)< さいたまさいたまさいたま!
さいたま〜〜〜〜! >( ゚∀゚ )/ |    / \__________
________/ |    〈 |   |
              / /\_」 / /\」
               ̄     / /
                    ̄


798 :名無しか・・・何もかも皆懐かしい:04/06/07 20:26 ID:???
>796
スーパージェッターだったりして。w

来たなっ、よぉーし。

799 :名無しか・・・何もかも皆懐かしい:04/06/07 22:51 ID:???
ボンバーマンジェッターズだったりして

800 :名無しか・・・何もかも皆懐かしい:04/06/08 02:49 ID:???
スーパージェッター確定です。



801 :名無しか・・・何もかも皆懐かしい:04/06/12 12:51 ID:???
…本当にスーパージェッターだったの?
ボケたつもりだったのにー。

802 :名無しか・・・何もかも皆懐かしい:04/06/13 04:50 ID:???
テレビ埼玉のページで確認した。
宇宙エースのときも、「エース」とだけ書かれていたから「エースをねらえ」、「ダンガードエース」がと思ったら白黒の「宇宙エース」だった。


803 :名無しか・・・何もかも皆懐かしい:04/06/13 11:47 ID:???
うーん、それはそれで裏山椎かな。>スーパージェッターと宇宙エース
わしゃ、遊星仮面とか海底少年マリンも見たいぞ。

…そんなのに比べたら、断然新しいマルスなのになぁ。

804 :名無しか・・・何もかも皆懐かしい:04/06/17 23:47 ID:???
白黒28号>宇宙エース>スーパージェッター
と、懐かしシリーズやってます。


ことろで、先日店頭でジェッターマルスのOPをほぼ30年ぶりに聞いたんだけど。
やっぱりアトムの劣化コピーだね。


805 :名無しか・・・何もかも皆懐かしい:04/06/18 18:21 ID:???
OPを「聞いた」だけでそんなことがわかるのか

806 :名無しか・・・何もかも皆懐かしい:04/07/02 04:10 ID:cDTuFZz2
>>804 は、ジェッターマルスを見たいという気持・イライラを押さえようとして、
無理しているのでは?

童話でも、食べたくても食べられない、おいしそうなブドウを
「あれブドウは、食べたらすっぱくでまずいんだ。」
と考えて、食べられない悔しさを紛らわす話があったような・・・


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